今回は若年性に発症する歯周病(歯周炎)についてのお話しです。
歯肉炎と歯周炎について
歯周病とは大きく歯肉病変と歯周炎に分かれます。炎症が歯茎(歯肉)に限局するものを歯肉炎といいますが、子供や20代の方でも、歯ブラシができていない場合には歯肉炎になってしまいます。
一方で、炎症が歯肉以外の部位、例えば歯の周りの組織や骨にまで及ぶ場合を歯周炎といいます。炎症が骨にまで及ぶと、骨が溶けていき、歯が揺れてきてそのうち抜けてしまいます。→歯周病について
歯周炎は加齢と共にリスクが上がってきて、40代では多くの患者が歯周病へ罹患します。
通常20代や30代前半あたりの方は歯周炎になることは少なく、歯ブラシをしっかりおこなうことで炎症が改善し、骨への影響はほとんどありません。しかしながら、まれに若年性に歯周炎が起きてしまうことがあります。
侵襲性歯周炎とは?
侵襲性歯周炎は、若い人に発生しやすい歯周病の一種です。この病気は、病気の進行が急速であることが特徴であり、昔は、「若年性歯周炎」とも呼ばれていました。慢性歯周炎とは異なり、侵襲性歯周炎は20代や10代から発症することがあります。
慢性歯周炎の様に歯を支える骨がなくなっていくのですが、そのスピードが速く、若い年齢で歯がいくつも抜けてしまうかたもいらっしゃいます。症状は通常の歯周炎とほとんど変わりません。急激に腫れたりしないことも多く、違和感程度で進行が進んでしまうこともあります。病気が進行すると、歯肉の後退、歯の動揺、歯周ポケットの深さの増加などが見られます。
また、前歯と奥歯の限定された部位に骨吸収が現れやすいのも特徴的です。
侵襲性歯周炎の原因
侵襲性歯周炎の主な原因は、慢性歯周炎と同じ細菌(プラーク)です。以前はプラーク中の特定の細菌 (A.a.と呼ばれるもの) の関与が言われておりましたが、現在では否定されつつあります(大学の授業でも昔は教えていましたが、今は、グレーとなっています)また、免疫機構の不調和や特定の遺伝子、遺伝性の関与が示唆されていますが、なぜここまで急激に歯周炎が進行するのかの原因はいまだ完全には分かっておりません。
侵襲性歯周炎の治療方法
侵襲性歯周炎による急速な歯周組織の悪化の原因は完全には分かっておりませんが、主な原因がプラークであり、通常の慢性歯周炎と変わりません。従って治療は、通常の歯周炎治療と同様に、原因(細菌)の除去をおこないます。治療期間は、病気の重症度や個々の患者の治療反応によって異なります。歯周組織の破壊の程度により、治療は数ヶ月から数年にわたる場合もございます。一方で、若年の患者様は細胞の反応が良いため、治りが良い場合も多々あります。従って少しでもおかしいと感じた場合は早めに受診することをお勧めします。
さらに患者さんは治療後の口内の健康維持のために、セルフケア(歯ブラシ)を徹底的に行う必要があります。
通常の方よりも歯周炎のリスクが高いことを自覚し、一生懸命歯磨きをやっていただく必要があります。
さらに定期的な歯科検診やクリーニングを続ける必要があります。歯科医師の推奨する治療計画に従うことと、良好な口内衛生習慣を維持することが、最良の治療成績を得るために重要です。
(管理者) 鈴木瑛一 歯科鈴木医院 副院長 日本歯周病学会専門医