トップページ/アクセス・お問い合わせ/ブログ一覧
まだまだ暑い日が続きますね。
良くコーヒーを日常的に飲むのですが、夏の期間はホットコーヒーではなく、アイスコーヒーやカフェオレを飲む機会が多くなります。
以前コーヒーが歯周病に与える影響について書きましたが、結果としてメリット・デメリットどちらの報告もあり、効果についてはあまり分かってはいないとの結論になってしまいました。
「コーヒーを飲むと歯周病になりやすい?」
今回は、コーヒーと虫歯や口腔がんとの関係についてみてみましょう。
コーヒーの有効成分
コーヒーには有効成分としてカフェインとクロロゲン酸(ポリフェノール)が入っています。
カフェインは主に交感神経を刺激し、アドレナリン分泌などを促し、心拍数や血圧などを上昇させたり、気管支拡張、利尿作用を促します。トイレに行きたくなったり、ほっとするのもその作用ですね。
クロロゲン酸には、抗酸化作用、抗炎症作用などの様々な生理活性を有することが報告されており、コーヒー由来のクロロゲン酸類には、食後の血糖値上昇抑制作用、血管内皮機能の改善、睡眠の質の改善など様々な効果を有することが報告されています。
コーヒーとう蝕(虫歯)との関係
コーヒーとう蝕との関係に関する報告は少ないのですが、カフェインが歯に与える影響はあまり良い報告はなく、例えばラットにカフェインを与え、その後に歯に酸を暴露させると、カフェインを与えられていないラットよりも大きく歯の表面が腐食し、う蝕が深くまで達する結果となりました (Falster AU et al. 1992)。また、カフェインを大量に添加した飼料を与えられたラットの歯のカルシウム含有量が少なかったとの報告もあります。
一方で、健康なヒト1120人の唾液サンプルを対象に、コーヒーの細菌に対する抵抗性を評価したところ、コーヒー溶液により、う蝕原因菌の一つであるミュータンス菌 (Streptococcus mutans) のコロニー増殖が阻害され、抗う蝕原性作用を示すことが報告されています (Godavarthy D et al. 2020)。
虫歯治療
口腔がんへ与える影響
次に、口腔がんとの関係をみていきましょう。口腔がんとの関係については報告は比較的多く存在します。
口腔癌とコーヒーの消費量との関係において、一定の条件を満たした研究を解析してまとめたレビューをみてみると、コーヒー消費量が多い者は、コーヒー消費量が少ないまたはない者と比較し、口腔がん発症リスクが低かったとの結果が示されています (Li YM et al. 2015)。
また、日本人を対象としたが10年以上の追跡調査によると、同定された口腔がん、咽頭がん、食道がんのいずれもコーヒーの摂取と逆相関してたとの結果を示しました。つまり、コーヒー摂取をしている場合、口腔がん、咽頭がん、食道がんのリスク低下が得られることが分かりました (Naganuma T et al. 2008)
口腔内に限らず、コーヒーは身体の様々な癌において予防に有効であるとの報告があり、その点においてはコーヒーのメリットが多くの論文で強調されています。
口腔・咽頭部における悪性腫瘍は、年々罹患数・死亡数ともに増加しており、人口の高齢化に伴い、口腔癌に罹患する人数も増加しています。コーヒーの摂取により、少しはがんの予防になる可能性はありますが、様々な条件で癌は発症するため、栄養状態や身体の状態には気を配ってください。
口腔内で気になる場所がある場合は早めの歯科受診をお勧めします。
口腔内の癌 (悪性腫瘍) について
まとめ
今回は虫歯と口腔がんに焦点を当て、コーヒー摂取との関係性をみてみました。歯周病に関しても以前と変わらず、メリットに働くという報告もあれば、デメリットに働くとの報告も有り、効果に関しては確証が得られていません。
ただ、過剰に摂取するとカフェインは炎症状態を加速させる恐れもありますので、注意が必要です。ラットにカフェインを摂取させた後、実験的に歯周病をおこさせると、カフェイン未摂取のラットと比較し、歯周病によりなくなる骨が有意に大きかったとの研究結果もあり、歯周病の状態でカフェインを取り過ぎるのは注意が必要です。ただ、本研究でラットに使用された一日のカフェイン量は人に換算すると、コーヒーカップ約16杯分/1日とのことなので、本当にコーヒー好きで常に飲んでいる方じゃなければ大丈夫だと思いますが・・・
また、砂糖などは虫歯や歯周病悪化の原因になりますので、コーヒーへいれすぎるのは注意してくださいね。
(管理者) 鈴木瑛一 歯科鈴木医院 副院長 日本歯周病学会専門医