歯科治療の一環として、歯磨き指導を受けたことがある方は多いと思います。歯磨きはとても重要で、虫歯や歯周病へのこれ以上ない治療・予防法です。
補助的清掃用具について
さて、皆さんは歯科用補助的清掃用具というものはご存じでしょうか。補助的清掃用具とは、歯間ブラシやデンタルフロス(糸ようじ)、タフトブラシなどといった、歯ブラシと組み合わせて付加的に使用する清掃用具の事をさします(図)。
この補助的清掃用具なんですが、普通の歯ブラシでは汚れが除去できない部分、例えば歯と歯の間(隣接面)や、一番奥の歯の後面などを磨くために使用します。
過去の研究では、歯ブラシのみの使用では隣接面のプラークは58%しか除去されませんが、補助的清掃用具を併用する事により、90%近くまで除去することが可能になると報告されております。(山本ら 1975年. 日歯周誌)
フロスは意味がない??
補助的清掃用具のメリットが言われている一方で、2016年にアメリカで ”デンタルフロスのメリットは科学的に十分証明されていない” という驚きのニュースが掲載されました (参考 https://apnews.com/f7e66079d9ba4b4985d7af350619a9e3)。
内容を簡単に要約すると、今まで口腔ケアの一部分として当たり前の様に推奨されていたデンタルフロスですが、過去に行われたデンタルフロスの有効性を示している研究は、その研究のデザインやサンプル数が十分とは言えない、もしくはバイアス(研究者による偏り)がかかってしまっているものがほとんどで、デンタルフロスの効果に対する科学的な根拠を示すには不十分であるという結果でした。
このニュースは、歯周病治療を専門にしている我々のなかでも、一時話題となりました。
しかしながらこの記事は、デンタルフロスの効果が不確実であるということを述べているだけで、やらないほうが良いと言っているわけではありません。むしろ臨床的には、フロスや歯間ブラシをしている患者さんのほうが明らかに清掃状態が良く、歯肉の状態は良いと感じております。
20億円ともいわれるフロス市場ですから、海外の歯科関連サイトでも多くの記事が掲載されました。今のところこのニュースによってフロスの使用率が下がったという報告もないようですし、あまり悪いイメージは持たれていないようですね。
直接の内容とは関係ないのですが、海外の記事 (https://gizmodo.com/wait-does-dental-floss-even-work-1784704856) を読んだときに、その冒頭の文章に目が行きました。
“From a very young age, it’s drilled into us that we need to floss daily to prevent gum disease and cavities.”
Drilled into という言葉は、かなり強い言葉ですよね。
“我々は幼い時から、歯肉の病気や虫歯の予防のためには日々のフロスが必要であるとたたき込まれてきた” とでも訳せば良いのでしょうか。
この文を読んだだけでも、海外においては子供のころからフロスの使用が習慣づけられているんだなぁ・・・ と、海外の予防意識の高さに感心させられたことを覚えています。
これは我々日本の歯科医師もしっかりと見習わないといけません。2010 年国民健康栄養調査によると、20代における歯間ブラシ・フロスの使用率は12.5%となっており,まだまだ先は長いですが。。
現在では、3歳児検診などで子供の時からフロスを使うように指導してくれる衛生士さんもおります。とても素晴らしいことですね!
次のブログでは補助的歯科用具を使う順番についても考察してみたいとおもいます。
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(管理者) 鈴木瑛一 歯科鈴木医院 副院長 歯周病学会専門医