我々が患者さんに歯ブラシのやり方を指導するときは、まず歯ブラシの持ち方から教えていきます。
一般的に歯科大学や衛生士学校で教えられる歯ブラシの持ち方は、ペングリップ(鉛筆を握る様な持ち方)を基本としています。
患者さんに説明する場合も、ペングリップを勧めていきます。その理由としては、力のコントロールがしやすく、更に細かい動きができるということがあげられます。
日本の歯科関連会社などのサイトを見てみても、歯ブラシの持ち方はペングリップを推奨しているようです。
しかしながら、先日有名な歯ブラシのパンフレットを見たんですが、そのパンフレットのモデルさんは、歯ブラシを手のひらで握って使用しています(パームグリップ)(写真)。このパンフレットを出しているTepe社はスウェーデンの会社です。スウェーデンは世界で有数の予防国家ですから、日本で教えている歯ブラシの持ち方がはたして正しいのかどうか、すこし疑問を感じました。
そこでいくつか論文を検索してみると、やはり海外の多くは手のひらで握るパームグリップと、鉛筆持ちのペングリップが主体であるようです。
インドの論文を読んでみると (Sharma S et al. 2012)、子供の歯ブラシの持ち方はパームグリップがほとんどで、92人中1人しかペングリップで持っていないという結果がでていました。やはり国によっても違うんですね!
ちなみに歯ブラシの持ち方によって清掃性は変わるのでしょうか。予防意識の高いフィンランドの論文では、パームグリップとペングリップを比べたときのプラークの除去率と歯肉に与える影響について研究されています (Niemi ML et al. 1987)。
結果として、プラーク除去率においては、どちらの持ち方でも有意な差がありませんでした。一方でパームグリップの方がペングリップと比較し、歯肉を損傷する確率が有意に髙くなるという結果を示しました。パームグリップではより歯肉にたいする圧力がかかりやすいから、というように述べられています。
日本人は歯茎の厚みが薄い方が多く歯肉退縮をしやすいため、出来ればペングリップ法の方がよいのかもしれませんね。でもペングリップでないと清掃性が悪いと考えていましたが、すこし考えが変わりました。
ちなみに電動ブラシの時は細かい動きはより必要なくなるので、力だけ気をつければどの持ち方でもいいと思いますよ!
(管理者) 鈴木瑛一 歯科鈴木医院 副院長 歯周病学会専門医