先日九州大の研究チームが、歯周病細菌により、認知症の原因物質が脳に蓄積する仕組みを解明したとのニュースが、朝日新聞社などで取り上げられました。
(リンク先 yahoo ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/372acf834c00143e86cbce46206592d1dc974aa3)
認知症は本人はもちろんのこと、介護をするご家族の方にも大きな負担がかかってしまう病気であり、その病態解明にむけて明るいニュースだと言えます。
今回は、認知症と歯周病との関係性について少し話したいと思います。
みなさん、歯周病が様々な全身疾患と関係していることはご存じでしょうか。
長年の研究により、糖尿病や肥満など、多くの全身疾患と歯周病との関連が判明してきており、全身疾患の治療の一つに歯周病治療が含まれる様にもなってきており、現在ではその関係性は歯科界や医科界だけでなく、一般の患者さんにも広く認知されてきています。
→詳しくは 歯周病と全身疾患について をご覧ください。
実は、歯周病と認知症との関係性についても、15年以上前よりその可能性は言われておりました。
いくつかの研究では、歯周病原細菌のひとつである Porphyromonas gingivalis (P.g.) が、炎症と認知症などの退行性病変との関連性を変化させる可能性が示唆されていたり(Kamer AR et al. 2020)、そのP.g.が実際のアルツハイマー病の患者の脳組織内に検出されたとの報告があります (Dominy SS et al. 2019)。
歯周病(歯周炎)が進行すると、p.g.を始めとする多くの歯周病原細菌が口腔内に増加します。この歯周病原細菌が末梢血管より血流にのって脳に行き、アルツハイマー病を始めとする認知症に何らかの影響を与えているのではないかということが言われています (Ryder MI 2020)。
また、本ニュースでも一部取り上げられておりますが、アルツハイマー病の原因となるアミロイドベータ(Aβ)といわれるタンパク質が重度歯周病患者で高いレベルで検出される事が過去の研究でも報告されています (JA Gil-Montoy et al. 2017)。
まだこのニュースの元になった文献は読んでおりませんが、このAβ蓄積の仕組みの一部が解明されたと言うことかもしれません。
今回の研究結果が、今後の治療薬の開発や病態解明により良い情報を提供してくれることを願っております。
(管理者) 鈴木瑛一 歯科鈴木医院 副院長 日本歯周病学会専門医