夏も終盤になって、やっと涼しくなってきましたね。
我々歯科医師は普段からマスクを着用して慣れているほうだとは思いますが、それでも真夏のマスクはなかなか辛いものでした。
コロナウイルスと嗅覚の消失との関係性がニュースになりましたが、一方で「自分の口臭が気になる」といったような患者さんが増えてきているように感じます。もしかしたらマスクをする機会が増えているからかもしれませんね。
口臭は主に年齢と共に強くなってくると考えられています。
一方で、都が実施した歯科保険調査によると、中高生において “口臭が気になる” と回答したのは約2割と、若年者においても自身の口臭が気になる方が一定の割合でいます (参照: 東京都学校歯科医会 においの科学)。
そこで、今回は口臭についてのお話しを少しさせていただきます。
口臭とは、「口あるいは鼻を通して出てくる気体のうち、社会的容認限度を超える悪臭」と定義されています (参照: e-ヘルスネット 厚生労働省)。
口臭の原因は?
そもそも口臭の原因はなにがあるのでしょうか。
よくある卵の腐った様なにおいや生ゴミの様なにおいは、硫化水素やメチルメルカプタン、ジメチルサイファイドなどの揮発性硫黄化合物が主な原因物質となっています。
揮発性硫黄化合物は、歯周病などで増加する嫌気性菌が唾液や血液、食物残渣などを分解し、腐敗することで産生されます。
口臭の8割以上は、上記の様なう蝕や舌苔、歯周病などの口腔疾患により引き起こされる病的口臭です。
癌、消化器、糖尿病などの全身疾患による口臭もありますが、全体の1-2割程度です。
そのほか、起床直後や空腹時、生理時、加齢によるものなどの生理的口臭や、 ニンニクやタバコ、アルコールなどによる嗜好品による口臭があります。
この生理的口臭や、嗜好品などの口臭は誰にでも起こりうるものです。一方で病的な口臭のほとんどは、揮発性硫黄化合物が原因であると言われています。
当院ではこの揮発性硫黄化合物の量を測定することができる口臭測定器を導入しております。もしご希望の方はお気軽にお申し付けください。
口臭を予防するには?
では、口臭を減らすにはどのような方法があるのでしょうか。
先程述べた様に、口臭の大部分は揮発性硫黄化合物が原因であり、その物質は歯周ポケット内や舌苔などにすむ歯周病原細菌が多く産生しております。
よって、もし歯周病がある場合は、まず歯周病治療を行うことが推奨されます。歯周ポケットが深い場合、ご自身の歯ブラシでも限界があり、専門的な歯周病治療が必要になる場合が多いです。→歯周病治療について
2016年の口臭に関するレビュー(過去の研究論文をまとめたもの)を読んで見ると、ガムや飲料水などにより一時的に口腔内を湿潤状態にすることで、口臭の抑制にはつながるものの、あくまで短時間の口臭抑制にしかならず、口臭の原因となる細菌を機械的に除去することなどが重要であると記載されております (Sophie DG et al. 2016)。
若年者のかたで、まだ歯周病に罹患していない場合も同様に、口の中の細菌を増やさないことが重要です。そのためには、ご自身の歯ブラシが最も重要であるとといえます。
また、歯ブラシ後にマウスウォッシュなどを行うことにより、細菌の付着を少なくすることが期待されます。
クロルヘキシジンは、洗口液のなかで最も口臭予防に効果的との報告もあります (Jones C. 1997他)。クロルヘキシジンは抗菌作用や抗う蝕作用が期待され、ブラッシングとの併用により、より効果的に作用することがあります。
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また、細菌が増えやすい環境にしないことも重要です。例えば口呼吸などにより口腔内を乾燥状態にしてしまうと、細菌が唾液で洗い流されず、増加してしまいます。
舌磨きなども口臭予防に有効ですが、正しい磨き方をしないと逆に炎症が起き、口臭が増える危険性もあります。正しい磨き方は、かならずかかりつけ医で教えてもらってください。
今回は口臭について簡単に書きましたが、原因は多岐にわたります。まずはお近くの歯科医院を受診して相談していただくのが良いかと思います。
(管理者) 鈴木瑛一 歯科鈴木医院 副院長 日本歯周病学会専門医