歯茎を腫れさせる薬とは?
今回は、薬剤による歯肉腫脹(歯肉の腫れ)についてお話ししようと思います。
歯周病の特徴の一つに歯茎の赤みや腫れがありますが、まれに特徴的な歯肉の腫れかたをする場合があります。
下の写真を見てみましょう。
左が一般的な歯周炎になったときの歯茎の腫れ方、右が薬剤により誘発された歯茎の腫れ方です。
右側の歯茎のほうが、ボコボコと腫れて堅そうな感じですね。
これは、高血圧の方が飲むことが多い降圧剤の薬(ニフェジピン系)などを飲んでいる方に特徴的に認められます。
他にも抗けいれん薬(フェニトイン系)や免疫抑制剤(シクロスポリンA)などを服用していると、副作用の一つとして線維性の歯肉の増殖を引き起こすことがあります。
このように歯茎がボコボコと腫れると、細菌(プラーク)が定着しやすく、歯ブラシで清掃が困難な状態になり、歯周炎が悪化するリスクが高くなります。
また、服用期間が長いほどその反応も現れやすく、過去の研究でも、長期的な薬剤の暴露が、歯肉増殖誘発のリスクを高める可能性が示唆されています (Pamuk F et al. 2013)
一方で、歯周病の悪化はプラークがなければおきません。したがって、細菌をきちんと取れるように歯ブラシを適切に行う、ということが重要です。また、治療方法は通常の歯周病治療とほとんど変わりません。
歯磨きの仕方などはコツがいるため、担当のドクターや歯科衛生士に指導してもらうことをお勧めします。
個人的にこのような歯茎の腫れは治るのに時間がかかることが多く、外科的に切除をする必要があることが多々あります。
また、経験上再発しやすいことがあります。再発しやすかったり、治りが悪い場合は、内科医の先生と相談し、服用薬剤の変更をする場合もあります。
しかし、あくまでも全身疾患に悪影響を及ぼさないことが前提です。自己判断で安易に薬剤変更するのは大変危険です。かならず相談してください。
(管理者) 鈴木瑛一 歯科鈴木医院 副院長 日本歯周病学会専門医